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今日も医師の循環器疾患・不動産投資まとめサイトにお越しいただきありがとうございます。
今日は心電図での心房粗動と心房頻拍の違いを解説したいと思います。
今日の内容は、アブレーション治療に携わる方、不整脈の心電図を勉強している医療関係者に向けて作成しています。
では解説に移ります。
心房粗動なのか、頻拍なのか?
極論を言ってしまえば、薬物加療をしていく上では、心房粗動、心房頻拍の診断がはっきりつかなくとも治療方針にあまり大きな違いはありません。
しかし、アブレーションに関しては、心房粗動か心房頻拍かは大きな違いとなります。
早速ですが、心電図を紹介します。
上の心電図は心房粗動でしょうか、心房頻拍でしょうか。それとも心房細動でしょうか。
(解説の都合上、右脚ブロックについてはいったん省略します。)
心房細動の基線は揺れることで有名だから(f波)、心房細動ではないよね。
V1を見るとP波がはっきり見えるので、この時点でまず心電図は心房頻拍か心房粗動のいずれかになると考えます。
結論から言えばこれは心房粗動です。
心房粗動とは?
心房粗動の電気回路は三尖弁周囲を旋回するという特性を持ちます。
三尖弁自体は個人差が少ないため、内服等をされていない場合、通常は約300拍/分(心房)の特徴的な速度と、約150拍/分(心室)の特徴的な速度となります。
ちなみに心房波300拍/分とはPP間隔が200msecであることに相当します。
また、よく勘違いをしている方がおられますが、三尖弁輪の旋回は上下方向(赤)でイメージした方がより適切です。
前後方向(黒)と考えると心電図が理解しづらくなってしまいます。
そして解剖学的峡部(緑色)では伝導が遅くなる性質があるので、通常型心房粗動では、電気の流れは向かってくる(速)、遠ざかる(遅)+遠ざかる(速)とノコギリの歯の形になります。
他にはV1誘導でP波が陽性、V6誘導でP波が陰性というのも通常型の心房粗動の診断の助けになります。
冒頭の心電図に戻りますが、V1ではP波の様に見え、一見、心房頻拍とも考えてしまいそうですが、Ⅱ誘導を必ず確認するようにしてください。
Ⅱ誘導でノコギリの歯の様に基線がギザギザとなっておれば、おそらくそれは心房粗動です。
通常、心房頻拍は局所的なことが多く、三尖弁輪の様に大きな回路を回ることはないため、基線に戻ると考えられます。
また非通常型心房粗動に対する考え方は、上記通常型心房粗動の逆回り、という考え方で原則的に問題ありません。
非通常型か通常型かを見極める方法には、F波が基線より上(非通常型)か下(通常型)かなども参考になります。
心房頻拍とは?
心房頻拍は上室頻拍の1つとして分類され、心房内の洞結節とは異なる部位から刺激が起こることによる不整脈です。
原因に、心臓術後、ジギタリス中毒、重度肺疾患、低カリウム血症などがあります。
心房頻拍と心房粗動の心電図の最大の見分けは、基線に平らな部分があるかどうかです。
先ほどの通り、心房粗動は三尖弁輪をぐるぐる旋回するので、基線が平らになることはありません。
一方、心房頻拍は局所のリエントリーがメインと考えられていますので、心電図を眺めると基線に戻っている部分が存在します。
心房頻拍の心電図も合わせて紹介しますので参考にしてください。
心房頻拍と心房粗動を心電図で見分ける手順
①Ⅱ誘導で鋸歯状波を探す。
②鋸歯状波に、速い・遅いの成分があるか確認する。(あれば心房粗動)
③心房粗動は三尖弁輪を周回するので、心房波の周期が300bpm程度と特徴的。V1(またはV2)で周期を測定する。(心房粗動のPP間は200msec)
④基線に戻っている部位がないかを探す。(戻っていれば心房頻拍)
まとめ
今回は心電図から心房粗動と心房頻拍をどのように見分けているのかについて解説しました。
心房頻拍は術後に多く見られるので、典型的な形となることも多くなく、実際のところは診断に苦慮する場合も少なくありません。
①鋸歯状波をⅡ誘導で探す→鋸歯状波があれば心房粗動
②V1(もしくはV2)でPP間隔が200msecに近いかを測る
③基線に戻る時があるか探す→あれば心房頻拍
以上、参考になれば幸いです。
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今日もありがとうございました!