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今日は頻脈性不整脈の原因としての『自動能』について実体験をもとに説明したいと思います。

頻脈性不整脈の起こるメカニズムは、多くの教科書では心筋細胞の活動電位記録として説明されています。

それは ①リエントリー ②異常自動能 ③トリガードアクティビティ の3つとされていました。

僕が研修医になった頃や循環器医として始まりのころは、上の先生方からも、「いいか●●(わい)、頻脈性不整脈の原因はまずリエントリー、異常自動能、トリガードアクティビティが原因なんだぞ・・」と説明を受けていました。

最近はこれらが多少見直され、①局所巣状興奮 ②リエントリー で説明した方が、理解されやすく実用的とされています。

ではこれまで言われていた異常自動能とはどのようなものなのでしょうか。

自動能の説明の前にまず簡単に①リエントリー③トリガードアクティビティについて説明したいと思います。

この2つは不整脈に詳しくなくとも、ある程度イメージしやすいと思います。

①リエントリー

例えば開心術で心臓の一部に瘢痕(手術に伴う傷のようなもの)ができた場合を想像してみてください。

それによる影響で傷口の周囲を電気興奮が旋回するというイメージです。

心房瘢痕部心房頻拍
心房内リエントリー性頻拍

どこかで図のような不整脈のモデルをご覧になったこともあるのではないでしょうか。

リエントリー性の不整脈で代表的なものが心房瘢痕部心房頻拍や房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)などになります。

③トリガードアクティビティ(撃発活動)

トリガードアクティビティを最もイメージしやすいものは期外収縮です。

撃発活動という名前からして、いかにも期外収縮という印象です。

細かい機序などは成書に委ねるとして、期外収縮は必ずしもトリガードアクティビティが原因ではないものの、大部分はトリガードアクティビティが原因です。

ですのでトリガードアクティビティ≒期外収縮と理解するとイメージしやすいかもしれません。

この①と③で何となく不整脈の構造がイメージできそうな気がしませんか?

つまり期外収縮が「ポン」と発生して、リエントリー回路によりぐるぐると旋回することで維持される。

では②の自動能って何やねん!ってのがこれから説明したい内容です。

②自動能

僕も自動能という現象を実際に経験するまでは、自動能を読んでも理解できませんでした。

(そもそも自動能について説明してある本も少ないように思います。)

異常自動能:細胞の膜電位が浅くなり、緩徐脱分極によって生じた自動性の興奮

具体例:心筋梗塞後や電解質異常による心室頻拍、心室細動

短っ!!そして期外収縮と何が違うん??って思わずなりませんか?

そこで実例です。

少し難しいですので読み返して理解してもらえればと思います。

図は心内心電図です。

心内心電図とは心臓(RA:右心房、CS:冠動脈洞)に直接、電極カテーテルを挿入し、心臓の内側から電位を測定しています。

図はある頻脈性不整脈に対して治療を行い、最後に心房頻拍ペーシングを行うことで不整脈が誘発されないことを確認しているところです。

ペーシング後も脈は安定しており、特に不整脈も誘発されませんでした。

めでたしめでたし((^▽^ゝと手術を終えようとします。

ところがその後徐々に脈拍が上昇していきます。

細かい図ですが、P波とQRS波の関係は1:1なので、この頻脈は一見すると洞性頻脈を疑わせます。

そして脈と脈の間隔を測定すると137bpmと表示されます。

これは洞性頻脈なのでしょうか。

ところがある瞬間、QRSが脱落するという所見を認めました。

洞性頻脈がブロックを起こすことは通常存在しないので、これは洞結節以外からの心房調律で、頻回の興奮に刺激伝導系が追い付かなかったことを示していると考えられます。

これはウォームアップ現象を伴う心房頻拍(PAT with block)と説明できます。

イメージで表すとすれば、洞結節以外の異所性ペースメーカー細胞が洞調律を追い越している状態に近いでしょうか。

おそらく、自動能による不整脈の発生機序は上記のほかにもいろいろ存在すると考えられます。

が、今回はあくまで自動能をイメージして頂きやすいように、自動能による頻脈性不整脈をイメージしやすいように説明させて頂きました。

不整脈の世界は奥が深く、理解が間違っているケース、説明が足りていないケースもあるかもしれません。

そのような際はご連絡をいただければ幸いです。

以上、説明とさせて頂きます。今日もありがとうございました!

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