2021年3月26日-28日に開催された第85回日本循環器学会学術集会で急性・慢性心不全診療―JCS/JHFSガイドラインフォーカスアップデートが発表されました。

改訂された点について簡単にサマリーします。

1,LVEFの経時的変化示すHFrecEFなど3つの指標を追加

LVEFによる心不全の分類に、新たに「LVEFの経時的変化による心不全の分類」が追加されました。(a)LVEFが改善した心不全(heart failure with recovered EF: HFrecEF)、(b)LVEFが悪化した心不全(heart failure with worsened EF: HFworEF)、(c)LVEFが変化しない心不全(heart failure with unchanged EF: HFuncEF)の3つが記載されています。

2,薬物治療:Ifチャネル阻害薬(HCNチャネル遮断薬)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)、SGLT2阻害薬の項目が改訂

J-SHIFT試験、PARALLEL-HF試験の結果をふまえ、HCNチャネル遮断薬、ARNI、SGLT2阻害薬に関して言及がされています。具体的には、ACE阻害薬/ARBではなく、ARNIの初期導入も考慮する。さらに、糖尿病の有無にかかわらず、心不全悪化もしくは心血管死の複合イベント抑制を期待してSGLT2阻害薬の導入も考慮するが、SGLT2阻害薬の心不全治療における位置づけは更なる検証が必要である。と記載されています。

3,MitraClipの推奨が新たに追加

2018年に報告されたCOAPT試験(N Engl J Med 2018; 379: 2307-2318)などの成績を踏まえて、「標準的な薬物治療の下でも症候性の機能性重症僧帽弁逆流を有するHFrEF患者(LVEF≧20%)のうち、弁膜症チームにおいて外科的開心術は困難であるが解剖学的にMitraClipによる修復可能と判断された患者に対して経皮的僧帽弁接合不全修復術を考慮する(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)」ことが推奨されました。一方で、僧帽弁が治療ターゲットで弁形成術などの手術治療が第一選択となる器質性重症僧帽弁逆流については「経皮的僧帽弁接合不全修復術を考慮してよい(推奨クラスIIb、エビデンスレベルC)」とされています。

4,心房細動合併例へのアブレーションの推奨がアップグレード

2018年に報告されたCASTLE-AF試験(N Engl J Med 2018; 378: 417-427)など複数の臨床試験の成績を踏まえて、カテーテルアブレーションが2017年改訂版の推奨クラスIIb、エビデンスレベルCから推奨クラスIIa、エビデンスレベルBにアップグレードされました。

5,心不全患者に対するSGLT2阻害薬の使用が推奨

SGLT2阻害薬に関する推奨が2017年改訂版の「推奨クラスIIa、エビデンスレベルA」より「推奨クラスI、エビデンスレベルA」にアップグレードされました。ダパグリフロジン、エンパグリフロジンが2型糖尿病合併の有無にかかわらず、HFrEF患者の心不全による入院や心血管死を有意に減らしたとの臨床試験〔DAPA-HF試験(N Engl J Med 2019; 381: 1995-2008)、EMPEROR-Reduced試験(N Engl J Med 2020; 383: 1413-1424)〕が2019年から2020年にかけて相次いで報告されたためと考えられています。

6,手術高リスク患者へのTAVI推奨

「手術高リスクの患者において代替療法としてTAVIを行う」ことが2017年改訂版の「推奨クラスIIa、エビデンスレベルA」から「推奨クラスI、エビデンスレベルA」にアップグレードされました。

7,多職種の共通知識高める新たな認定制度の記載を追加

2021年度から日本循環器学会が認定制度を開始した「心不全療養指導士」に関する記載を新たに設けられています。多職種チームによる心不全管理の普及に伴い、それぞれの職種が共通の知識や技術を獲得し、チーム医療を円滑に推進するための共通資格で、「今後、心不全療養指導士による療養指導の効果が検証されていく必要がある」とされています。

8,慢性心不全の緩和ケアにおける質評価指標が記載

2018年度以降の心不全緩和ケアに対する診療報酬改定を受け、患者要件や緩和ケアチームの要件などが追加されました。また、「緩和ケアはQOLを向上させることを目的とする集学的医療であり、診療の質が問われる」として、多職種パネルにより選定された35項目から成る「慢性心不全の緩和ケアにおける質評価指標」が記載されています。

9,今後期待される治療:vericiguat、omecamtiv mecarbilが記載・改訂されました

以上となります。参考になればうれしいです。

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